自治体職員の読書ノート

自治体で働くソーシャルワーカーが、読んだ本を紹介します。

【2388冊目】アルフレッド・ランシング『エンデュアランス号漂流』

 

エンデュアランス号漂流 (新潮文庫)

エンデュアランス号漂流 (新潮文庫)

 

 
エンデュアランスの意味は「忍耐」。南極大陸横断に挑戦した探検家シャクルトンが率いる船の名だ。ただし、エンデュアランス号は本書の前半のうちに氷に閉じ込められて身動きがとれなくなり、放棄される。残り数百ページはただひたすら、シャクルトンら一行は、氷の上を歩き、あるいは極寒の海の上を小さなボートで漂うばかり。それすらもできず、何日もひとつところに閉じ込められることも少なくない。

ものすごい本である。実話を元にしているとはとても思えない、人間という生き物の耐えうる極限をとことんまで試されるような、試練に次ぐ試練。飢えの恐怖に襲われ、足元の氷がひび割れ、極寒の海で波をかぶり、しかもそれが何日も続く。なにしろ28名の乗組員がサバイバルを強いられた期間は、なんと17ヶ月に及ぶのだ。

人間とは自然の中でいかにちっぽけな存在であるか。そして同時に、人間とはその精神においてなんと偉大な存在であることか。本書を読んでいると、このふたつがなんの矛盾もなく同時に腑に落ちる。アラスカで写真を撮り続けた星野道夫がこの本をこよなく愛したというが、うなずける。文句なしの傑作ノンフィクションだ。