【2389冊目】エーリッヒ・ケストナー『飛ぶ教室』
珠玉の児童文学。子供の頃に読むべき一冊だが、大人になって読むと、これがまた沁みるのだ。
寄宿舎というのが絶好だ。それぞれに個性と才能を備えた男の子たちがいい。それを支える魅力的な大人たちが素晴らしい。「正義先生」と「禁煙さん」には、自分が子供の頃、こんな大人に出会っていたら、と思わされる。勇気とは何か。友情とは何か。正義とは何か。男の子たちにとってもっとも大切な「問い」と「答え」が、本書にはみっしりと詰まっている。
生徒たちが先生にもたらした素晴らしいクリスマス・プレゼントとはなんだったのか。貧しさゆえに汽車賃を都合できずクリスマス帰省ができなくなった生徒に対して、ベク先生が行ったことはなんだったのか。それは単なる返礼ではなく、血の通った心の贈与なのである。子供は必読、かつて子供だった大人たちも必読の名著。 .
「ただ一つ、自分をごまかしてはいけません。また、ごまかされてもいけません。不幸にあったら、それをまともに見つめることを学んでください。うまくいかないことがあっても、あわてないことです。不幸にあっても、くじけないことです」
「かしこさをともなわない勇気はらんぼうであり、勇気をともなわないかしこさなどはくそにもなりません! 世界の歴史には、おろかな連中が勇気をもち、かしこい人たちが臆病だったような時代がいくらもあります。これは、正しいことではありませんでした。勇気のある人がかしこく、かしこい人たちが勇気をもったときにはじめてーいままではしばしばまちがって考えられてきましたがー人類の進歩というものが認められるようになるでしょう」