【2374冊目】ピーター・トライアス『ユナイテッド・ステイツ・オブ・ジャパン』
ユナイテッド・ステイツ・オブ・ジャパン 上 (ハヤカワ文庫SF)
- 作者: ピータートライアス,中原尚哉
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2016/10/21
- メディア: 文庫
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ユナイテッド・ステイツ・オブ・ジャパン 下 (ハヤカワ文庫SF)
- 作者: ピータートライアス,中原尚哉
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2016/10/21
- メディア: 文庫
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この表紙を見ただけで湧き上がるある種の期待は、おそらく読後、良い意味で裏切られる。もちろんメカ大暴れ、ガジェット満載の作品なのだが、それだけにはとどまらない。これはディックの『高い城の男』の正統な後継者、堂々たる歴史改変SFなのである。
舞台は「第二次世界大戦で日本が勝利した」もうひとつの1988年。日本統治下のアメリカでは天皇が絶対的な神であり、「反体制的な」思想の持ち主は「特高」や「憲兵」によって取り締まられる。つまり戦時中の日本の状態が、そのまま継続しているのだ。しかし科学技術は実際の1988年よりおそらく進んでおり、「電卓」と呼ばれる高機能のコンピュータや巨大ロボット兵器「メカ」、腕に取り付ける「ガンアーム」まで存在する。
著者は相当な日本オタクらしく、随所に挟まれる日本ネタが読んでいて楽しい。一方、天皇を絶対視した恐怖政治は、実際に戦時中に行われていただけに異様なリアリティがある。ポップでクールな感覚と、集団同調的で抑圧的なメンタリティ。日本人や日本社会のもつ二重性を、著者は実に巧みに小説の中で展開している。自分に自信のないネトウヨ系の狭量な「日本人」の方々は、たぶんこの本を楽しむことはできないと思うが、それ以外の方は、騙されたと思って読んでみてほしい。まっとうなバランス感覚とユーモアセンスがあれば、予想の斜め上を行く満足が得られるコト請け合いだ。
- 作者: フィリップ・K・ディック,土井宏明(ポジトロン),浅倉久志
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 1984/07/31
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