【1917冊目】松原隆彦『宇宙はどうして始まったのか』
最先端の宇宙論を、ここまでわかりやすく説明できることにびっくり。複雑怪奇な相対性理論や量子論をざっくり大づかみにしつつ、宇宙の始まりに切り込んでいく手際は見事の一言だ。
とはいえ、その上で言うのだが、「宇宙を理解する」なんて、そもそも人間の知性の手には負えないのかもしれない。だいたい、得られる情報自体がわずかなものなのだから、そこからどんな仮説を引き出そうが高が知れている(「賢いプランクトン」のたとえは秀逸)。そこを割り切って、あえて仮説に「遊ぶ」のが、宇宙論の醍醐味なのかもしれない。
そう思って読めば、ホィーラーの「観測者参加型宇宙」やホーキングのトップダウン型宇宙など、本書に登場する宇宙論はいずれも興味深いものばかり。特にホィーラーの「宇宙は情報である」という考え方には、世界を見る目を一変させるインパクトがある。宇宙論を通して、マクロとミクロ両面から世界認識の最前線を知るには格好の一冊だ。