自治体職員の読書ノート

自治体職員です。仕事の関係上、福祉系が多めです。読書は全方位がモットー。

【459冊目】勝間和代「読書進化論」

勝間和代の本がものすごく売れている。本書が面白いのは、その一端を著者自身が明かしているところ。

タイトルに「読書」とあるが、本書がユニークなのは、単に「読む」レベルにとどまらず、「書く」「売る」にまで言及しているところである。「書く」については著者自身の体験も踏まえ、本だけでなくブログを含めたアウトプット全般の秘訣を明かしており、個人的にもいろいろ参考になった。さらに「売る」のほうに至っては、リアル書店・ネット書店が入り乱れての混戦状態の中で、「本を売る」仕組みがどのようになっているかという舞台裏を紹介し、その課題を明快に分析している。つまり本書は、「読む」「書く」「売る」という、本にかかわる3つの要素それぞれについて論じつつ、それらを相互にからませ、さらにウェブと比較・対比することで、本というメディア自体の特質を浮かび上がらせ、この時代にあって本とどう関わっていけばよいかという点について、著者独自の視点を披露する一冊である。

こう書くとなんだか難しそうに見えるかも知れないが、心配無用。これはこの著者の著作全般に言えることだが、議論の組み立てが非常にしっかりとしており、しかも抽象論に終始せず、具体的な実践を常に意識して書かれているため、読みやすいうえ即効性がきわめて高い。ただ、本書は本というものを「自分を進化させる手段」としてある種功利的に、道具として捉えているところがあるため、そのあたりで反発を感じる人はいるかもしれない。

ちなみに、本書のもう一つの特徴は、本に閉じられない読書体験を提供するという試みを行っている点である。具体的には、ウェブ版「読書進化論」なるページを作り、感想文を募集したり、関連情報を提供している。ちなみに、このエントリもトラックバックというかたちで参加させていただく予定。こういうのは、やっぱり参加しないとつまらない。