hachiroetoのものぐさ遊読帖

自治体職員。仕事は福祉系。読書は雑食系。

【460冊目】佐藤徹・高橋秀行・増原直樹・森賢三「新説市民参加」

新説市民参加―その理論と実際

新説市民参加―その理論と実際

市民参加に関する学部生向けテキスト、という位置づけで書かれたとのこと。そういうだけあって、理論から実際までをバランスよく、網羅的に記載している。今まで読んだこの種の本の中では、確かに最も「テキスト」らしい体裁で、構成もきちんとしている。

また、これもテキストとしての特性に関連するのかもしれないが、「あるべき論」が多い類書と比べると、すでに実施されている「市民参加」の蓄積を前提に内容がつくられており、現状を写し取ったという側面が強い。そして、現状把握として見ると、市民参加はもはや「当たり前」の事象になってきているということが、本書を読むと実感としてわかる。確かに、現実に進んでいるのは一部の自治体にすぎないかもしれないが、その「一部」の進み方が圧倒的であるのに加え、裾野が思ったより広がってきている。市民参加に関する取り組みは、他の政策に比べて他自治体のマネをすることが適切ではなく、また難しい。そのため、早期に取り組んでいる自治体と遅れている自治体の差が縮まりにくく、むしろ「私の地方は時期尚早で……」なんて言っていると、どんどん差が開いていく。また、市民参加は行政と市民の意識がスパイラル状に進化しているという特質があり、この点からも、市民参加における「自治体格差」はすさまじいものがあるように思われる。

市民会議や住民による政策提言制度など、理念が先走っているケースも少なくないが、特に「強い」のは市民主導、市民起点の、いわば必要から生じた市民参加である。行政主導が弱いのは、やはり理念先行のゆえだろうか。逆にいえば、前にも書いたかもしれないが、市民から市民参加の動きがあった時、即応できる体勢を行政側がもつことが必要なのかもしれない。

なお、これも前に書いたが、個人的に、市民という言葉を安易に使うことには少々抵抗がある。ただ、本書はその間口を十分広くとり、いわゆる選別的な視点をもっていないように感じられた。