自治体職員の読書ノート

自治体で働くソーシャルワーカーが、読んだ本を紹介します。

【436冊目】山田晴義編著「地域コミュニティの支援戦略」

地域コミュニティの支援戦略

地域コミュニティの支援戦略

地域コミュニティの衰退が叫ばれ、その再生が望まれるようになって久しい。その一因には、地方行政そのものがいろいろな面で、これまでのように「丸抱え」で地域の福祉まちづくり等を担うことができなくなっている、という現実があるように思われる。さらに、地方分権の流れの中で住民との協働が求められる中、相手方としての地域コミュニティの充実が求められている、という前向きの理由もあるのだが、いずれにせよ、地域コミュニティの役割が大きくなる中、その「支援システム」に着目したのが本書である。

地域コミュニティの支援者は、大きく「行政」「民間」に分けられる。行政については、これまでの「事業主体」から「支援機能」にシフトしていくことが必要とされているが、本書で主に期待されているのは、むしろ民間の支援システム構築の必要性である。その主体としてはNPO等、いくつかの団体が挙げられているが、中でやや重点が置かれているのが、地方大学が地域コミュニティに対して果たしうる役割である。地域に根ざし、高い専門性とインフラをもつ地方大学が、地域コミュニティに欠けている部分を大きく補うことができる、ということであろう。

また、本書のひとつの特徴は、日本での地域コミュニティ再生の実例とともに、イギリスの地域コミュニティ政策についてかなりのページを割いて解説している点である。イギリスで地域コミュニティの単位となっているのは「パリッシュ」という地区単位であるが、イギリスでは国や地方自治体の支援のもと、パリッシュが自ら計画を策定し、日本であれば自治体が自ら行うような、さまざまな事業を実施している。そして、その活動を支えているのが「RCC」等の支援システムであるらしい。本書の最後に掲げられている提言は、要するにこうした支援システムを日本でも構築し、地域コミュニティの充実を図るべきということである。

確かに、地域コミュニティの再生は重要な課題である。そのために官民を問わず地域コミュニティを支援するしくみが必要であることも同感だ。ただ、読んでいてひっかかったのは、イギリスでおそらくはそれなりの歴史的経緯を経て構築されてきたシステムを日本に導入するのであれば、もうちょっと厳密な日英の地域コミュニティや政治・行政システムの比較が必要なのではないか、ということ。特に歴史的・制度的比較の視点が弱いように感じた。