【259冊目】カレル・チャペック「ロボット」
- 作者: カレル・チャペック,Karel Capek,千野栄一
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 2003/03/14
- メディア: 文庫
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チェコの作家チャペックによる戯曲。ロボットという言葉を最初に登場させたことで有名。
本書に登場するロボットは人間と外観上は変わらないが(このあたりはわれわれがイメージするメカニックな外観とはちょっと違う)、感情もなく、人間に忠実に従って与えられた作業を行うだけの存在である。しかし、「虐げられているロボット」に同情する女性ヘレンにそそのかされた科学者により感情を与えられたことでかえって暴走し、人類を抹殺してロボットだけの世界を作り上げようとしてしまう。当然まだアシモフの「ロボット三原則」など影も形もない頃の作品だが、ロボットと感情(魂)の有無、ロボットと人間の支配関係の逆転など、後世のさまざまなロボットものの小説、映画等に登場するモチーフは、すべてこの短い戯曲の中で登場している。本書が、類似の先行作品がない中での1920年の出版であることを考えると、チャペックの先見性はただごとではないことが分かる。
読んでいて星新一の短編や手塚治虫のSF(それに、ロボットじゃないが「2001年宇宙の旅」のHAL)を思い出したが、もちろんこのチャペックの戯曲のほうが「本家本元」。しかも物語としても非常にコンパクトにまとまっており、SFとしても楽しめる。寓話的SFの名作である。