自治体職員の読書ノート

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【1607冊目】イアン・スチュアート『数学の秘密の本棚』

数学の秘密の本棚

数学の秘密の本棚

今、数学を面白く語らせたら、たぶんこのイアン・スチュアートの右に出る人はいない。

本書はその著者が14歳の頃から集めまくってきた数学ゲームやパズル、面白エピソードをてんこ盛りに詰め込んだ一冊。有名なものからちょっと聞いたことはあるもの、全然知らないものまでいろいろあるが、さすがの絶妙な語り口と説明の手際があざやかで、まるでおもちゃ箱のような本に仕上がっている。

なんといっても全部が読み切りなのがいい。たいていの数学関係の本だと、途中の説明が理解できなくてその後が全部わからなくなり脱落する、というパターンが多いのだが、本書ではその心配はまったくいらない。分からなくっても(実際全然理解が及ばないトピックもけっこうあった)さっさと飛ばしてページをめくれば、また全然違うネタが転がっているのだから。

一応カンタンな内容から難しいものへと進むようになっているらしいのだが、途中で比較的分かりやすいパズルが挟み込まれていたりするので、そこでホッと息をつき、安心することができる。おお、まだまだ自分もついていけてるじゃないの、みたいな。まあ、単なる錯覚というか、それも著者の手の内なんだろうけど。

内容的には、巻末に答えと「解き方」が載っているパズル系と、数学エピソード系に大きく分かれているが、パズル系はただ読んでいるだけじゃなく、ひとつひとつ解きながらの読書なので(たいていは降参して答えを見ることになるのだが)、めっぽう読むのに時間がかかる。特に私の場合、読書スペースが電車の中なので、頭の中だけでこの手のパズルを解くのはかなり大変だった。みなさんはできれば机の上に紙とエンピツを用意してから読まれたほうがよい。

特に私がハマったのは「偽コインを見つける」(p.32)。これは巻末ではなく本文中に解説と答えが出ているのだが、それはともかく、この手の「計量モノ」のパズルは比較的得意なつもりだったのに、本書の問題には手も足もでなかった。問題だけ引用させてもらいましょうか。ちなみにネットでも詳しい解説は出ているが、まあ、まずは考えてみてもらいたい。これはハマります。

「あなたはコインを12枚もっている。11枚は同じ重さで、1枚だけ他より重いか、それとも軽い。あなたは天秤を最大3回だけ使って、どのコインが違う重さなのか、そしてそれが軽いのか重いのかを判断しなければならない。天秤には目盛はなく皿が2枚あるだけなので、分かるのは、左右が釣り合うか、それとも重い方が下がって軽い方が上がるかだけだ」


数学エピソード系は、ピタゴラスからフィボナッチ数、カオス理論にポアンカレ予想フェルマーの最終定理オイラーの公式ゲーデルの定理にリーマン予想と、とにかく豪華絢爛。しかも説明がめっぽう分かりやすく、ヘタすると一冊の本まるごと読むより、著者のこの解説を読むほうが理解が進む。

カタイ話ばかりではない。数学ジョーク、数学者の奇行、ちょっとした数学雑学などもほどよく按配されており、まあとにかく全編にわたって著者の「数学って面白いでしょ?」という声が聞こえてきそうな一冊なのだ。読むほどに、なんだか著者が数学好きのやんちゃ坊主に見えてくる。いや、たぶん実際そういうキャラなんだろう。とにかく数学が好きで好きで、面白くて面白くてしょうがないのだ。きっと。

ちなみに私が一番意外だった数学雑学は「携帯音楽プレーヤーはいつリピートするのか」というタイトルのモノ。携帯音楽プレーヤーに入れた曲を「ランダム再生」にすると、なんだか同じ曲ばっかり再生されるような気がしていたのだが、この部分を読んでやっと「謎」が解けた。

なにしろ1000曲の入った携帯音楽プレーヤーをランダム再生すると、たった38曲で、同じ曲がリピートされる確率が2分の1より大きくなるというのだ。思ったより少ないでしょう? ちなみにこれは何の本で読んだのか忘れたが、スティーブ・ジョブスiPodのランダム再生を「完全なランダムではない再生」にあえて変更していたような記憶が。

もうひとつ、同じトピックから雑学。道行く人に誕生日を一人ずつ聞いて回ると、平均何人目で同じ誕生日が出てくると思いますか?……答えはなんと、23人。えっと思った方、理由を知りたければ自力で計算式を立てるか、でなければ本書の131ページを開いてくださいね。