自治体職員の読書ノート

自治体職員。仕事は福祉系。読書は雑食系。

【2689冊目】こうの史代『ぼおるぺん古事記』

 


すばらしい一冊、いや三冊だ。『この世界の片隅に』で戦時下の日常を丹念に描いたこうの史代が、日本神話のミステリアスでユーモラスな世界観をみごとに漫画化してみせた。

しかも現代語訳ではなく、書き下し文ベース。それでもちっとも読みにくくないのは、やはり絵の力だろう。特に、たくさん出てくる神様を「キャラ化」して描き分けているのが、読み手としてはたいへんありがたい。「古事記」最大のつまづきポイントである「神様の名前の長さ」を、こういうやり方で回避するとは。

第1巻が天地創造からスサノオヤマタノオロチ退治まで、第2巻は一転してオオクニヌシを主人公とした冒険物語、第3巻はホヲリノミオトをめぐる物語がメイン(いわゆる「海幸山幸伝説」)。とにかく古事記の原文のレールから外れず、しかもマンガとして面白いというのがタダゴトではない。冥界の蛆まみれのイザナミや焼石で殺されるオオクニヌシといったシーンもしっかり描かれている。

個人的にツボだったのは、タケミカヅチが乗る天鳥船神(アメノトリフネノカミ)が白鳥の脚漕ぎボートだったり、醜女とされるイワナガヒメがほとんどモアイ像なところ。冥界のイザナミがポテチをつまみながら寝転がってテレビ(しかもワイドショー)を観ているのも笑えた。まあ、そのあたりも含めて、やはりこれはさすがの作品なのであります