【2690冊目】中村文則『去年の冬、きみと別れ』
2人の女性を殺害し、死体を焼いたとされる男性へのインタビューで、この小説は始まります。
でも、どこかおかしい。
「資料」として突然挿入される、奇妙な手紙。
何度も投げかけられる「君には無理だ」「私たちの領域には到達できない」という声。
被告の姉がかもしだす異様な存在感。
そして、事件の裏側に隠されたとんでもない秘密と、タイトルの意味が、明らかになります。
う〜ん。
そもそもトリック小説として読んでいなかったこともありますが、
これはかなりのサプライズ。
こないだ読んだ『イニシエーション・ラブ』もそうでしたが、
この展開には、かなり意表を突かれました。
ただ、そのことで、それまで読む中で感じていた不自然さや違和感が、見事に解消されるのも事実。
著者の小説は今まで『掏摸』しか読んだことがないのですが、
こういう「つくり」の小説が書けるのですね。
でも、これはなかなかのバッドエンドですね。
全体のトーンも陰鬱で、やや病的。
メンタルの不安定な人は、不用意に読まないほうが良いかもしれません。
ところで問題の「M・M」と「J・I」ですが、
その「意味」はわかったのですが、
著者は、誰か具体的な相手を想定しているのでしょうか。
それだけが最後に気になりました。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました!