【2358冊目】伊坂幸太郎『モダンタイムス』
先日読んだ『魔王』の50年後の続編である。浮気を疑う妻が雇った男に拷問されそうになるという、いかにも伊坂幸太郎っぽいオープニングからはじまるこの小説は、なぜか「システムとの戦い」という壮大かつ珍妙なテーマに向かって突進していく。
わかりやすい悪役はいない。問題はシステムだ、という指摘は確かにそのとおり。そのシステムは、私たちが「仕事」として行う無数の行為から成り立っている、ということもそのとおりだと思う。
こんないかにも小説になりにくいテーマに挑んで小説にしようとする果敢さがすばらしい。「システム」を描くのに「検索」というツールを使うのもユニークだ。疾走感と浮遊感のある独特な展開は相変わらずだが、前作同様、比較的ばらけずまとまっているのは、やはりこのテーマに対する著者の切実な思いが影響しているのだろう。
「人間は大きな目的のために生きているんじゃない」「もっと小さな目的のために生きている」(p.364-365)