【2345冊目】阿部和重『シンセミア』
破格の小説。
圧倒的なボリューム。最初から最後まで、絶え間なく続くセックス&バイオレンス。容赦ないエログロ。疾走感のある文体。盗撮グループ、ロリコンの警官、ヤク中の夫婦など、山ほど登場する強烈な人物。いやはや、とても正気とは思えない。
にもかかわらず本書の主人公はおそらく「神町」という場所そのものなのだ。まさにガルシア・マルケス、あるいはフォークナーの世界。ここはマコンド、あるいはヨクナパトーファか。
いかにも日本的な、保守的で陰湿な田舎町を描きつつ、本書自体はまったく「日本の小説」っぽくない。スケールがとにかくぶっとんでいて、規格外。世界文学級の絶品重層的エンターテインメントなのである。園子温監督で連続ドラマ化希望。地上波じゃゼッタイ流せないけど。