【2219冊目】酒井順子『こんなの、はじめて?』
本にもいろいろあって、正面からガッツリ取り組まなければならないラーメン二郎大盛ゼンマシのような本もあれば、気軽にサックリ読めるポテトチップスみたいな本もある。本書はその「ポテトチップス」のほうの一冊。ハードな読書が続くと、箸休めに手に取りたくなるようなエッセイ集だ。
とはいえ、こういうエッセイこそが、実は書くのはいちばん難しいのではないかと感じる。時事ネタを取り上げ(本書の初出は、2009年~2010年に「週刊現代」に掲載された)、面白おかしく書きながら、それが7年後、8年後の今読んでも楽しめるというのは、なかなかできることではない。ちなみに出てくるのは「民主党政権」「のりピーと押尾学」「SMAP草なぎくん逮捕」など、何とも懐かしいネタばかり。今から7年前って、こんな感じだったんですね~。
それはともかく、本書を読んで感じたのは、時事ネタを取り上げていながら、著者がそこにどっぷりハマっていないこと。著者自身の視点やものの考え方のスタンスがはっきりしていて、時流や雰囲気でブレていないのだ。リアルタイムのエッセイなのに。
それでいてユーモア感覚を忘れず、文章はライトで読みやすく、さらりとまとまっている。ポテトチップスというと馬鹿にしたように思えるが、むしろこれは塩味が絶妙でいくらでも食べられる「かっぱえびせん」的エッセイというべきなのかもしれない。それにしても、2009年から2010年って、今から振り返って懐かしく思える程度には悪くない時代だったんですねえ。今の世の中を7年後に振り返ったら、はたして同じように思えるだろうか?