自治体職員の読書ノート

自治体職員です。仕事の関係上、福祉系が多めです。読書は全方位がモットー。

【1576冊目】中野雅至『なぜか仕事がうまくいく! これが公務員の勉強法だ! 』

なぜか仕事がうまくいく! これが公務員の勉強法だ!

なぜか仕事がうまくいく! これが公務員の勉強法だ!

タイトルだけで「!」が二つも入っていてなんだかお買い得な感じだが、内容は地に足のついた実践的なものが中心。地方公務員から国家公務員、さらに大学教員と、仕事をしながらの勉強を一貫して続けてこられた著者ならではの、仕事に役立つ勉強法が具体的にまとめられている。

そもそも公務員が勉強するのは、どういう場合だろうか。本書のオビをみると「仕事」「試験」「自己啓発」の3つが挙げられている。もっとも、本書の内容自体は、その3つを明確に分けて論じているワケではない。自己啓発、昇任試験については単独の章が設けられているが、それ以外の部分では、どんな勉強でも共通して「使える」ノウハウや考え方がまとめられている。

時間の有効活用法、仕事と勉強の「二足のわらじ」を実現するための考え方、モチベーションを維持するための方法など、扱われている内容は幅広い。「無駄な残業はきっぱり断る」「小さな成功体験を積む」のような基本姿勢に関わるものから「スリーウェイバッグの活用」「時間利用の上手い上司を手本に」などすぐ実践できそうなもの、「好きな仕事は簡単に見つからないと悟る」のような考え方までいろいろ盛り込まれている。

なるほどと思ったのは「公務員の強みは文章が上手いこと」という指摘。えっ、と思われるかもしれないが、言われてみると公務員の仕事は文書で成り立っていると言っても過言ではないのだから、普段の仕事にきちんと取り組めば、それが結果として文章力の向上につながるというのはもっともだ。もっともそのためには、日々の仕事を漫然としてこなすのではなく、積極的に「全力投球で」仕事をする必要があるのだが。

そしてこの「公務員ならではの強みを活かし、仕事の内容をそのまま勉強につなげていく」という発想は、本書全体にも通じる公務員の勉強の基本姿勢になっている。よく、仕事は手を抜いて昇任試験や資格試験の勉強に血道をあげているけしからん公務員がいるが、それではダメなのである。

例えば自己啓発のための勉強にしても、仕事と関係ない資格試験の勉強をして、仮に資格が取れたとしても、それで食っていけるほど「士業」の世界は甘くない。このあたりは以前読んだ『なぜ、勉強しても出世できないのか?』(佐藤留美著)にも書いてあったことだが、結局、転職や独立で問われるのは資格の有無より、それまでの仕事の実績であり、地に足のついた仕事力であるからだ。

これを本書の言い方でいえば「「この資格では食えない」というよりも、公務員の人脈やキャリアを基礎に考えればいい」(p.113)ということだ。資格だけで食える仕事なんて、このご時世、そもそもほとんど存在しないのである。

特に、公務員の身分保障が今後も続くとは思えないからこそ、それまでの実績や行政「業界」のノウハウをきちんと積み重ねることが、実は「食っていく」ためのもっとも現実的なリスク管理になるということになる。

ということで、本書は実践的な勉強法として非常に「使える」一冊となっている。

なお、第8章では読書感想をブログに書くことを戒める文章があり、これについてはいろいろ言いたいこともあるのだが、キリがなくなりそうなのでやめておく。

あえて、引用だけしておこう。この文章に対する見解で、読書という行為そのものに対する理解の程度が分かる、そういう意味では怖い文章だ。みなさんはどう思われますか?

「ただし、自分で書いた読書感想文を公表するのはあまりお薦めしません。特に、実名でネットに読書感想文を公表するのはどうでしょうか?
 実名で読書感想文を書くことにはそれなりのリスクを伴います。実際に、本を執筆した側から言わせてもらえれば、「○○という本の要点は結局、△△というだけの話」のような安易な感想は気分のよいものではありません。
 その意味でも、中途半端な読み込みしかしないのであれば、ブログやツイッターで実名で読書感想文を書き散らかすというのは止めたほうがいいでしょう。名誉棄損で訴えられるとまでは言い切れませんが、読書感想文を書く側もそれなりの覚悟を持って書くべきだと思います。
 その一方で、匿名で書くのはどうでしょうか? こちらはこちらで無責任な書き方になるのはある程度予想できます。匿名だと思い切ったことばかりを書いてしまって、どうも浮ついたものになるからです」(p.208〜209)