【1543冊目】みうらじゅん、リリー・フランキー『どうやらオレたち、いずれ死ぬっつーじゃないですか』
- 作者: みうらじゅん,リリー・フランキー
- 出版社/メーカー: 扶桑社
- 発売日: 2011/11/23
- メディア: 単行本
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タイトルが本書の内容をすべて表している。シリアスでいて、同時にふざけている。いや、その逆か。
要するに飲み屋トークなのだが、いやいや、だからといってあなどるなかれ。ジョーク満載、下ネタ満載、下世話で、面白く、しかも深い。飲み屋トークのお手本のような会話である。こういうトークのできる友人がいる人は幸福だ。
掲げられているテーマは「不安とは?」「親子とは?」「やりがいとは?」「命とは?」など、かなりお堅いものばかり。でも、トークはそこからどんどん横滑りし、エロ話に突入したりダジャレになったりしつつ、油断していると突然、深い深い「箴言」が飛び出してくる。こういうのも飲み屋トークならではだろう。本ばかり読んでいては(これも本だけど)、こういうコトバにはかえって出会えないものだ。
リリー「よく「日本人はプライドが低すぎる」って言うけど、プライドじゃなくて美意識が低いんです。プライドはとても高いんですよ、日本人は」(p.54)
リリー「おれとみうらさんの思ってる「生きる目的」みたいなものは、自分の美意識を、生きているうちはちゃんと守りたいっていうことなんですかね?」(p.59)
みうら「どんなジャンルでも新しいことって、もう出尽くしてるんだよ。だけど、若いころはそればっかり探すでしょ。本当は、そこで何年やり続けられるかに意味があるのにね」(p.121)
そして、本書の大テーマ「生と死」にまつわる究極の箴言が、コチラ。
みうら「でも人生の最終地点は「死」じゃないですよ」
リリー「それなのに「今際」を豊かに過ごしたいと思って、みんな「今」を貧しく生きてる。死の瞬間を彩るためなら、今が色褪せてもいいっていうのは、すごくヘンな考え方だと思う。だって、思いどおりにはならないですよ、絶対」(p.224)
う〜ん、確かにそのとおりだなあ。別のところでも書いてあったけど、今という「点」の連続が人生なのに、最後の瞬間という「点」だけを満足させようっていうのは、考えてみればすっごくヘンな考え方だ。いや、ひょっとしたら逆に、「今」が充実していないから、せめて死に際だけは充実させようって考えてるのかな。でも、それってどうなんだろうか……
で、「今」の生き方に深くかかわってくるのが、上の引用でも出ている「美意識」ということなのだろう。美意識をもって瞬間瞬間を生きられるか。大げさかもしれないけど、人生ってそれに尽きるんだろうなあ、と思わされた。あとは適当に脱力して、エロもギャグも楽しんで……ね。