【1223〜1225冊目】穂村弘『ラインマーカーズ』『にょっ記』『にょにょっ記』
ラインマーカーズ―The Best of Homura Hiroshi
- 作者: 穂村弘
- 出版社/メーカー: 小学館
- 発売日: 2003/05
- メディア: 単行本
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- 作者: 穂村弘
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2009/03/10
- メディア: 文庫
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- 作者: 穂村弘
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2009/07
- メディア: 単行本
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久々の3冊セット。今をときめく歌人・穂村弘の短歌選集+日記エッセイ2冊。
『ラインマーカーズ』は短歌のベストセレクション。前からいろんなところでエッセイやら短歌やらを目にするので気になっていたが、歌集一冊を通して読むのは初めて。驚いたのはその幅の広さ。ギャグもあり、切ないものもあり、不条理ものもあり、ブラックユーモアも実験作もある。特に、会話をそのまま短歌で読むというスタイルは秀逸。
短歌といえば57577の31文字。だが、この人の短歌は、あれっ、と思うくらいに文字数の制約を感じない。破調でもなんでもないのだが、短歌くさくないのだ。それでいて、見事に31文字に収まっている。もちろん中にはいかにも短歌、という感じのもあるので、一概にはいえないのだが。
例えば、こんなの。
「猫投げるくらいがなによ本気出して怒りゃハミガキしぼりきるわよ」
「酔ってるの?あたしが誰かわかってる?」「ブーフーウーのウーじゃないかな」
「海にでも沈めなさいよそんなもの魚がお家にすればいいのよ」
あと、個人的に印象に残ったものは、映像が目に浮かぶようなものが多いかな。例えば、
回転灯の赤いひかりを撒き散らし夢みるように転ぶ白バイ
讃美歌を絶叫しつつゆらゆらとスーパーマンが空をあゆめり
あたり。ほかにもツボだった歌はいっぱいあるのだが、引用は割愛。ぜひそれぞれで、好みの作を探してほしいので。そして、一番びっくりしたのは、これ。
実は、このあいだ、朝 なんでもありません
書き間違いではない。ホントに「朝」の後が白いのだ。恐ろしいのは、これを読んでいると、この無言のところまでこっちが文字を感じて31文字にしてしまうこと。日本人の「みそひともじDNA」の強さを感じた。
『にょっ記』『にょにょっ記』は日記風エッセイ。これがまた、べらぼうに面白い。妙に淡々としているのだが、その間合いがたまらなくおかしいのだ。フジモトマサルのイラストもぴったり。特にツボだったのが、一昔〜ふた昔くらい前の本のネタ。『女性百科宝鑑』とか『ヤング愛情学』とか『新語新知識附常識辭典』なんて本を古本屋で探してきてツッコミを入れるのだが、昭和初期とか戦後間もないころの感覚と、それを突っ込む著者の感覚が絶妙なのだ。それにしても、こういう短文のエッセイを読むと、こうやってダラダラと文章を綴ることがひどくみっともないことのように思えてきてならないのだが、なぜだろうか。