自治体職員の読書ノート

自治体職員です。仕事の関係上、福祉系が多めです。読書は全方位がモットー。

【1920・1921冊目】絲山秋子『絲的メイソウ』『絲的サバイバル』

 

絲的メイソウ (講談社文庫)

絲的メイソウ (講談社文庫)

 

 

 

絲的サバイバル (講談社文庫)

絲的サバイバル (講談社文庫)

 

 

ある作家が気になると、なるべく最優先で読むことにしているのが、処女作、代表作、最新作、エッセイ、対談の5冊。中でもエッセイや対談は、小説という表舞台からは見えない、舞台裏のつくりが見えてくるのでオススメだ。

ということで、最近ちょっと気になりつつある作家、絲山秋子のエッセイ2冊を読んでみた。『絲的メイソウ』は著者が好き嫌い全開で世の中の事を綴ったバラエティに富む一冊だが、『絲的サバイバル』のほうは、月1回、一人でキャンプをするという連続企画のリポート。個人的には、キャンプ自体にあまりなじみがないこともあって「メイソウ」のほうが面白かった。

著者の好き嫌いには私と合わない部分もあるが(特に「祭嫌い」「喫煙好き」)、それでもここまで罵倒し倒されると、かえって小気味よい気分になる。キレの良い啖呵って、聞いているだけでちょっとスカッとするじゃないですか。ああいう感じなのだ。

例えば酒の席で言えば、カラオケは「人の顔も見ずに画面を見る。歌も聴かずに「本」を見る。礼儀に反したことが常識だ」。さらにお酌、セクハラと話題は回り、スナックのママを「一体ママってなんだ。自分の親だってママなんて呼んでいたのは幼稚園の時までなのに」とバッサリ。そして興ざめな「中締め奉行」までがやり玉にあがる。ちなみに著者はかなりの呑み助。だからこそ許し難い「酒の席の敵」なのだろう。

こんな調子でバッサバッサと斬りまくりつつ、自嘲と自虐も忘れない。そのバランスがなんともいえず、特に「自分の取説」(取扱説明書)は、簡単に書けそうだが、いやいや、ここまで自分を客観視しつつ、笑いを交えて書くというのは「容易じゃない」ことなのだ。

ちなみに、このシリーズにはもう一冊『絲的炊事記』があるらしく、アマゾンのレビューを見るとこちらもなかなか面白そうだ。まあ、これは後の楽しみにとっておこう。とりあえず今日は、このへんで。