【967冊目】曲亭馬琴著・白井喬二現代語訳『南総里見八犬伝』
- 作者: 曲亭馬琴,白井喬二
- 出版社/メーカー: 河出書房新社
- 発売日: 2003/02/05
- メディア: 文庫
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お久しぶりの読書ノートになってしまった。理由のひとつは、過去の記事の削除依頼なんぞがあったりして書く気力が湧かなかったからなのだが(初めてのことで、かなり参った。読書ノート自体を閉じようかと思った)、もうひとつはこの長大な小説をずるずると読み進めていたから。
とてつもなく面白い。原作は、当時の和本サイズとはいえ全98巻106冊の長さ。それを白井氏がどの程度ダイジェストしているのかわからないが、それでも文庫本上下各600ページ以上の分厚さである。ちなみに今回読んだ河出文庫版、なぜか下巻のみ絶版らしい。不思議だ。
それはともかく、どんな小説でもこれだけ長いとだいたい途中でうんざりするのだが、本書に限ってはまったくそういうことはなかった。エンターテインメントの極致。単純な勧善懲悪の世界ながら、ハラハラドキドキの連続で見事に最後まで引っ張っていく。中国に『水滸伝』があり、フランスに『モンテ・クリスト伯』があるなら、日本は『南総里見八犬伝』だ。
水滸伝が下敷きになっているのは明らかだ。また、ラスト近くの海戦はあきらかに三国志の赤壁の戦いがモチーフとして用いられており、おそらく他にも中国の白話小説や古典モノがいろいろと織り込んであるのだろう。そして本書のパターンは、日本の小説や漫画、映画などに受け継がれ、特にドラゴンクエストやファイナルファンタジー、あるいはポケモンなどのゲームに流れ込んでいるように思える(作者自身が意識しているかどうかはともかく)。日本のゲームクリエイターは、八犬伝を読むべきだ。
内容を書きだすと大変なことになるのでやめておくが、とにかく読んで損はない。私は機会に恵まれなかったが、できれば少年少女のころに読んでおいたほうが良い。理屈抜きの面白さを保証する。