hachiroetoのものぐさ遊読帖

自治体職員。仕事は福祉系。読書は雑食系。

【680冊目〜682冊目】竹内久美子『小さな悪魔の背中の窪み』『男と女の進化論』『賭博と国家と男と女』

男と女の進化論―すべては勘違いから始まった (新潮文庫)

男と女の進化論―すべては勘違いから始まった (新潮文庫)

賭博と国家と男と女 (文春文庫)

賭博と国家と男と女 (文春文庫)

う〜ん。面白かった。参った。科学エッセイというジャンルになるのだろうか。生物学や動物行動学、さらには遺伝子理論をキーにして、人間の性格から男女の秘密、果ては国家の成り立ちに至るまでを縦横無尽に語りまくる。文章はロジカルでありながら自由自在、ユーモアをそこらじゅうにちりばめながら、気がつくとあらゆるものが「遺伝子の戦略」の成果になっている。

論理は時としてアクロバティックに跳躍し、あるいはやや無理目な3回転半ひねりに挑戦する。だが、その奇抜さをきまじめに受け取ってはつまらない。本書はそのアクロバシーこそを愉しむ本である。ハイクオリティの科学サーカスである。結論が「真実かどうか」など、一番どうでもよいことである。

例えば、脚の長い男性やウェストがくびれた女性がモテるのは「寄生虫を腹の中に飼っている可能性が少ないため」。あるいは、「血液型が性格を決めるのではなく、性格が血液型を推測させる」という逆転の発想。ハゲが女性に嫌われるのは、繁殖能力が強すぎるため(ハゲは絶倫、ってよくいわれるが、本当らしい)モテてしまうと子どもが生まれすぎて育てきれなくなる(結果として遺伝子が伝わりにくくなる)。賭博の胴元とカモの関係が親分・子分関係に拡張し、それが国家の元型になった……そのほかにも、とにかくびっくりするような「見方」がこの3冊にはぎっしり詰まっている。ちなみに数あるこの著者の本からこの3冊を選んだのは、たまたまブックオフの100円コーナーに並んでいたため。こんな面白い本が100円でも売れないとは、なんと見る目がないことか。

著者の見方のベースになっているのは、リチャード・ドーキンスの「利己的な遺伝子」論である。生物は遺伝子の乗り物であり、遺伝子を後世に伝えるための遺伝子のありとあらゆる戦略(もちろん擬人化しているわけだが)が、人間を含む動物の行動様式やものの考え方を決定づけているという、まあある種身も蓋もない考え方なのであるが、それが語り口ひとつでこんなに面白くなってしまうというところに、竹内マジックを感じる。

なお、『賭博と国家と男と女』の結論に従うと、政界で話題の「世襲制限論」など、ちゃんちゃらおかしいということになる。何しろ遺伝子的には、君主制こそが理想的な政治形態であるというのだから。ちなみに永田町のセンセイがた、特に当選回数が多い議員さんには、O型の血液型が極端に多いそうである。理由は『小さな悪魔の背中の窪み』をどうぞ。