hachiroetoのものぐさ遊読帖

自治体職員。仕事は福祉系。読書は雑食系。

【683冊目】吉野作造『吉野作造評論集』

吉野作造評論集 (岩波文庫)

吉野作造評論集 (岩波文庫)

吉野作造は、大正時代にいわゆる「大正デモクラシー」を思想的に支えた一人。いま、大正デモクラシー戦後民主主義との「つながり」が気になっているのだが、何かのヒントが得られるかもしれないと思って読んでみた。

う〜ん。正直、なかなか頭に入らなかった。別に難解な内容ではない(文章も、この時代のものとしては平易なほう)。言いたいことがわからないわけでもない。しかし、どうも入り込めない。鍵と鍵穴が合っていない感じがする。

理由のひとつは、やはり当時の政治的な動きが分からないままに読んでいたからだろう。本書は評論集であり、当時の政治情勢にあわせた時々刻々の文章である。なのにその背景もわからず読んでいたのだから、これはわかるわけがない。実は本書にはしっかりした解説がついており、個々の評論と対応する形で、当時の政治状況がちゃんと説明されていた。これと首っ引きで読めば良かったのか、と気づいたのは本編読了後。後の祭り。

いや、だったらもう一回(今度は当時の状況も踏まえて)読みなおせばよいのだが、どうもそういう気にならない。いや、決して再読に値しない本というわけではないのだが、なんというか、文章があまりにその時代の文章であって、当時の概念や社会的状況の影響を受け過ぎている印象がある。良くも悪くも、この人の思想は、大正という時代の子供なのである。意地悪く言えば、時代を超えた普遍性のようなものがいまひとつ突き抜けてこない。思想そのものは現代でも通用する(特に今の政治状況は、政治的に非常に混乱していた大正末期によく似ており、したがってそれに対する批評は現代人にも十分届く)だろうが、それを語る語り口というか、前提となっている思想や政治状況があまりにも「大正的」すぎると感じてしまった。

いやいや、それはむしろ、私自身がこうした「大正の政治思想」を読み解くための読み方を身に付けていない、ということなのかもしれない。勉強不足、方法不足の読書であった。この結果は、みごとにそれをたしなめられた、ということなのかもしれない。