【539冊目】佐々木信夫「自治体政策」
- 作者: 佐々木信夫
- 出版社/メーカー: 日本経済評論社
- 発売日: 2008/01
- メディア: 単行本
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分権時代の自治体に求められている「自治体政策」のあるべき姿を描く一冊。
分権改革の流れ、「新しい公共」論、議会改革、市町村合併、道州制、大都市制度等々、重要で基本的なテーマに絞って議論を展開しており、総じて分かりやすく、説得力のある内容となっている。単なる事実の説明にとどまらず、著者の肉声が聞こえてくるような文章である。個人的には、市町村合併については著者と少々意見が異なるのだが(著者は、市町村合併については基本的に賛意を表されている。私個人の意見はどちらかというと大森彌氏に近く、少なくとも現在のような「アメとムチ」を国がふるって強圧的に実施される市町村合併は地方自治の理念に逆行すると考えている。ちなみに道州制についても著者とはちょっと意見が違う)、他の部分についてはうなずかされる部分が多かった。
特に、地方議会の改革を論じた第4章は面白かった。議会改革は自治体改革の中ではどちらかというと傍論のように扱われることが多いが、本書を読むと、むしろ議会改革は自治体を変えるための本丸的な存在であることがよくわかる。地方分権改革の結果、自治体が政策主体となり、住民やNPO等による「新しい公共」が現実化しつつあるなかで、議会はその強力な応援団にもなれば抵抗勢力にもなりうるからである。著者は、議会改革の具体的な処方箋として「議会独自の『もう一つの予算編成」、複数の自治体の連携による「議会法制局」の立ち上げ、一人一席の「執務室」設置などを挙げる。これらは要するに、議会自身、議員自身が行政と対等に渡り合えるだけの力をつけるという改革であるのだが、残念ながら、こうした改革におそらくもっとも反対するのは、行政ではなく議会サイドであるような気がする。