自治体職員の読書ノート

自治体で働くソーシャルワーカーが、読んだ本を紹介します。

【499冊目】大森彌「変化に挑戦する自治体」

変化に挑戦する自治体―希望の自治体行政学

変化に挑戦する自治体―希望の自治体行政学

副題は「希望の自治体行政学」。「自治体行政学」とは耳慣れない言葉だが、これは「行政学を『国の行政』学と『自治体の行政』学に分け、それぞれに固有の問題領域を理論化したいという意図」(本書あとがき)に由来しているとのこと。そういう意味では、まさに本書は現代の自治体が直面している「固有の問題領域」をひとつひとつ洗い出し、分析し、対応策を検討するもので、「自治体行政学」の(当然)最初の、そして決定版のテキストであるといえる。

自治体職員論、市町村合併と自治体、公共空間論、地方議会論、分権改革や三位一体改革をめぐる論考まで、「総論」的なトピックを幅広く扱っているが、その記述の充実ぶりはちょっと類をみない。国や地方のさまざまな制度改革に携わってきた著者ならではの、現場と理論がハイレベルで融合した文章であり、自治体行政の「いま」を知るには絶好の一冊である。特に充実しているのは自治体職員論。中でも、「場(トポス」)」という視点から自治体職員論を展開した一節は強く印象に残った。この種の本としてはやや異色のトーンであるが、職員と地域のかかわりを「臨床の知」という観点で語るこの文章は一読の価値があると思う。

また、市町村合併をめぐっては、行政範囲の広域化に伴って、行政区域内における「分権分散型」の自治体を提唱している。いわゆる「支所」を重視し、そこに大幅に業務と権限を委譲した上で、地域住民も巻き込んだ地域行政、地域自治を展開するという構想である。これもまた、大賛成。出張所や支所こそ、大幅な自由裁量を与えた上で、最も有能で熱意のある職員を配置すべきなのである。