自治体職員の読書ノート

自治体で働くソーシャルワーカーが、読んだ本を紹介します。

【251冊目】今川晃・牛山久仁彦・村上順=編「分権時代の地方自治」

分権時代の地方自治

分権時代の地方自治

近年の地方制度改革を踏まえた地方自治論。

まちづくり福祉、環境、民間化、住民との協働など、地方行政にとって重要なテーマをバランスよく取り上げている。章によって著者が異なるが、大きく共通しているのが、住民サイドからの視点がたいせつにされていることであるように思う。地方制度改革の成果の多くが国と地方との関係など「団体自治」の面に重点を置いた改革であり、住民自治の観点はやや置き去りにされていたと言ってよいように思われるが、本来の地方自治の理念からすれば、むしろ住民自治の充実こそが団体自治の前提となるべきであって、本書もそうした観点に立っている。

全体的な記述の方向性はややリベラル系に寄っているが総じて明快で常識的。また、複数の著者が各章を担当するというスタイルであるが、それぞれの著者が自身の主張や意見をかなりはっきりと提示しており、単なる事実の羅列になっていないところに好感がもてた(共著の本だとそういうのが多いのだ)。いわゆる総論と各論のバランスも取れている。ほめ言葉ばっかりになってしまったが、実際かなりよくできた本だと思う。頻繁に制度改革が続く中、最新の地方自治事情を反映してその輪郭をくっきりと描き出し、住民の視点からしっかりと論じた、すぐれた地方自治のテキストである。個人的には、「都市計画」と「まちづくり」の違いからまちづくりについて論じた「まちづくりと自治体行政」、自治体の環境政策について根本的なレベルから論じた「自治体環境政策の軌跡と持続可能性」あたりが充実した各論として参考になる点が多かった。