hachiroetoのものぐさ遊読帖

自治体職員。仕事は福祉系。読書は雑食系。

【474冊目】兼子仁・北村喜宣・出石稔共編「政策法務事典」

政策法務事典

政策法務事典

政策法務」といえばこの一冊、といえる本が登場した。

政策法務の位置づけや意義、法律と条例の関係、条例づくりの考え方から組織、研修、さらには訴訟や不服審査まで、およそ政策法務に関するほとんどのテーマを網羅し、それぞれについて詳細な解説が施されている。著者は共編者の3人に加え、山口道昭氏、田中孝男氏、磯崎初仁氏など、地方分権政策法務や政策理論、行政法理論等の第一人者や、自治体行政の現場で奮闘されてきた方など、まさに錚々たるラインナップ。事典とはいっても通読するに足りるクオリティであり、これまで書かれてきた政策法務テキストの集大成といえる内容となっている。

政策法務はそもそも何であるかといえば、基本的には自治体の政策を展開するための「ツール」、つまり手段であると言ってよいように思う。しかし、それが単なるツールにすぎないのであれば、ここまで多彩な議論が行われることはあるまい。地方分権改革で、自治体の置かれた立場は大きくかわり、政策主体としての主体的な活動を期待されるようになった。そして、首長をはじめ個々の職員も、また議員も、国や県の顔色を窺うところから180度転換し、その地域や住民の方を向き、その意向を酌んで(さらに進んだ自治体では、住民自身がその政策形成や決定にコミットして)自治体を運営しなければならなくなった。その中で、自治体政府と住民の関係を規律し、双方が地域経営の主体として一定のルールでフェアに関わり合っていくためには、法的な考え方や方法論が、これまで以上に自治体単位で求められる。政策法務は単なるツールでありながら、分権時代の新しい自治体に期待される基本装備になってきているのだと思う。

ただ、本書に代表される政策法務系の本を読んでいて少々鼻につくのは、そのあまりに素朴で無邪気な理念主義、理想主義的発想である。もちろん理念や理想を掲げるのは素晴らしいことであるが、そこと実務の間を架橋する議論がなかなか見当たらない。たいていは一部の「先進自治体」を称賛し、その他の「後進自治体」を切って捨てるだけである。なかなか「先進自治体」とは呼ばれない某自治体の私としては、この「先進」と「後進」の差はどこで生れ、どこで差がついたのか、そこに何らかの構造的な要因があるかどうかを知りたいのだが、カリスマ的な首長や職員といった属人的なファクター以外にどんな初期条件があるのか、なかなか見えてこない。まあ、なんとなく見当がつかないでもないが……。