自治体職員の読書ノート

自治体職員です。仕事の関係上、福祉系が多めです。読書は全方位がモットー。

【500冊目】福岡政行編著「自治体再生へ舵をとれ」

自治体再生へ舵をとれ

自治体再生へ舵をとれ

改革派首長といわれる方々を招いて行われた講演や討論を活字化したもの。全国の議員さんを対象としたシンポジウム「清渓セミナー」の内容が元になっているらしい。

登場するのは北川正恭氏(三重県知事)、清水聖義氏(太田市長)、逢坂誠二ニセコ町長)、神田孝次(北見市長)、福田富一(宇都宮市長)(いずれも、肩書きは本書刊行当時)。考え方に微妙な違いはあるが、いずれも自治体改革の最前線を走ってきた方々である。本書は、具体的な実践例をもとに、その改革の道筋を語るものであるが、面白いのはその「進め方」。どの首長さんにも共通するのは、まず自らが明確なビジョンと価値観をもっていること、そしてそれをきちんと現場レベルにまで展開し、成果を挙げていること。また、職員や議員、関係団体よりまず住民を巻き込み、住民の意見を重視していること。単なる猪突猛進ではなく、常に自らの理念を住民の意思と突き合わせ、それを裏付けとしているからこそ、強力な推進力が生まれていること。

とはいっても、それは単に「住民におもねる」というのとは全然違う。清水市長が明快に言っているように、わがままはわがまま、住民自らがやるべきことはやるべきと言うことも大事。何でも行政が引き受けるのではなく、何をやって何をやらないか、というところを明確にしていく。そのための大前提が、情報公開である。情報公開の重要性はここにある。

また、本書には北川氏、清水氏、逢坂氏の対論も収録されており、これがまた面白い。特に、市町村と都道府県の役割論をめぐって「県は国の方ばかり向いて国の下請機関になっている」と指摘する清水氏に対して「市町村がしっかりすれば、県は市町村と合体すればよい」と北川氏が答える一幕はなかなか。