【213冊目】宇野重規「トクヴィル 平等と不平等の理論家」
- 作者: 宇野重規
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2007/06/08
- メディア: 単行本
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気鋭のトクヴィル研究者による本で、「アメリカのデモクラシー」を軸に、平等・不平等の観点からトクヴィルの思想を読み解こうとしている。
核となっているのは第2章で、トクヴィルにおける一見分かりにくい「平等・不平等論」が明快に整理されている。それによると、貴族社会・階級社会では「不平等」が当たり前の状態であったのだが、徐々に(おそらくは啓蒙思想等の手助けもあり)「平等」概念が浸透してくるにつれて、これまで当然であった「不平等」が「是正されるべき状態」としていわば可視化され、「平等化」への圧力が高まる。民主主義はこうした「平等への圧力」が一方的に高まり続ける(なにしろ、不平等の状態が肯定されるべき要素は何一つない)というメカニズムをもっているという。個人的には、この「平等概念の浸透」に関連して、この間読んだダーントンの「猫の大虐殺」におけるフランス農民や印刷業者たちの意識の変化を思い出した。「自由」や「平等」に対する意識の高まりが、現実との落差を認識させ、それが暴動や叛乱、そして革命につながっていくということなのだろう。
また、トクヴィルの生い立ちや「アメリカのデモクラシー」が書かれた背景などに1章が割かれており、書き手の視点を学ぶという点で非常に参考になった。再読中なのだが、「ブルボン王政に忠誠を誓う超保守的な王党派貴族にアメリカの民主主義を説く」つもりになって読んでみると、またいろいろ見えてくるものがある。トクヴィルがこれほど丁寧かつ具体的に論を進めているのは、そうでもしなければ理解が及ばないほど「フランスの貴族」と「アメリカのデモクラシー」の隔たりは大きいということなのだろう。