【212冊目】内田樹「街場のアメリカ論」
- 作者: 内田樹
- 出版社/メーカー: NTT出版
- 発売日: 2005/10/13
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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内田氏の文章は、論理的な厳密性よりどちらかというとアクロバティックな議論の展開の妙を楽しむという意識で読むことが多いが、本書も「実際にアメリカがどうか」というより「アメリカについてどういう見方もできるか」という、一種の知的エンターテインメントとして読むとたいへん面白い。宗教や歴史はもとより、ファーストフード、アメコミ、児童虐待、シリアルキラーなどの現代的トピックスを取り上げ、その裏側にアメリカの深層を読み込んでいくという内容である。古今東西の思想・哲学から映画、マンガまでを傍証に引きつつ、一見関係なさそうなアメリカの病理的現象を自在に結びつける手際はさすがの一言。発想の柔軟性と論理のしたたかさについては学ぶ点の多い一冊である。