【63冊目】西原理恵子「いけちゃんとぼく」

- 作者: 西原理恵子
- 出版社/メーカー: 角川書店
- 発売日: 2006/09/01
- メディア: 単行本
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西原理恵子の漫画とはけっこう付き合いが長い。「まあじゃんほうろうき」でファンになり、「晴れた日は学校をやすんで」「ぼくんち」「できるかな」など読み続けてきた。最近では、自分が親になったこともあり「毎日かあさん」にはまっている。
本書は、そのサイバラの「絵本」である。 絵本といっても、いつものサイバラ節は炸裂である。子どもである「ぼく」の目線を離れることなく、生きることのかなしさ、辛さ、それを突きぬけて生きるつよさ、そのすべてを笑いとユーモアに包み、独特の叙情に満ちた世界をつくりあげている。
「いけちゃん」がまたよい。なんだかよく分からない奴で、ユーモラスで、あたたかくて、なつかしい。その正体は最後には分かるのだが、そこがまたなんともいえずすばらしい。おそらく作者は、いけちゃんの正体を描こうかどうか迷ったのではないだろうか。しかし、「ぼく」がおとなになるまでを描くのなら、あの説明は必要だったろうと思う。
じっさい、子どもだけではなく、むしろ大人が読んで良い絵本である。大人が読めば、自分の中にいる、やわらかい心を持った「子ども」の存在を思い出せると思う。子どもが読んでも良い。むずかしい漢字はけっこう使われているが、絵がとにかくすばらしく、内容も子どもだからこそ分かる部分がたくさんあると思うので(大人には見えず、子どもには見えるものって絶対にあると思う)。そこらの小説や漫画、絵本では及びもつかない、とにかく素晴らしい作品である。