【30冊目】西尾勝「未完の分権改革」
- 作者: 西尾勝
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 1999/11/10
- メディア: 単行本
- 購入: 1人
- この商品を含むブログ (2件) を見る
地方分権推進委員会の「理論的支柱」(解説の表現による)として、地方自治法の大改正に至る道筋をつけた西尾氏による、地方分権改革の舞台裏を描いた本。地方分権推進委員会の活動のかたわら行われた講演がもとになっているため、先行きが見えない中での奮闘の過程や、官僚、政治家たちとのやり取りがなまなましく記されている。
「総論賛成、各論反対」という著者の言葉どおり、原則論には賛同しつつ具体的な細部においては抵抗を重ねる人々(主に各省庁の官僚)の中にあって、いかに改革を進めていくか。それには、一歩一歩、具体的なレベルでの徹底した話し合いの中にしかないことが、これを読むと良く分かる。特に各省とのグループヒアリングの描写からは、委員の方々の熱意と根気強さに敬意すら覚える。
また、本書は単なるドキュメントにとどまらず、具体的な制度改革のプロセスの描写を通じて、地方自治・地方分権の基礎と問題点をあざやかに描き出している。特に、先般の分権改革で「出来たこと」と「出来なかったこと」を明確にすることにより、今後の地方制度改革の課題が見えてくる。その意味でこの本は、地方分権の「いま」と「これから」を見通すための、すぐれた案内書になっていると思う。