自治体職員の読書ノート

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【2095冊目】森見登美彦『ペンギン・ハイウェイ』

 

ペンギン・ハイウェイ (角川文庫)

ペンギン・ハイウェイ (角川文庫)

 

 
町に突然あらわれるペンギン。ペンギンを生み出す力をもった謎の「お姉さん」。そして森の中に突然あらわれた不思議な「海」……。不思議な要素満載の青春SF小説。

日本SF大賞を受賞したらしいが、サイエンス・フィクションというより藤子不二雄の「すこし・ふしぎ」の方がしっくりくる。何といってもチャーミングなのが、妙に大人びた小学4年生の「ぼく」のキャラ。なにしろ一行目から「ぼくはたいへん頭が良く、しかも努力をおこたらずに勉強するのである」とくるのだから、恐れ入る。しかも大人になるまでは、「三千と八百八十八日かかる」のだ。「そうするとぼくは三千と八百八十八日分えらくなるわけだ。その日が来たとき、自分がどれだけえらくなっているか見当もつかない。えらくなりすぎてタイヘンである」

これを高校生や中学生が言ったらイタイが、小学4年生だとちょっとかわいくさえ思えてしまうから不思議である。そしてこれは、このちょっと(かなり)ませた小学4年生の視点から綴られたスタンド・バイ・ミー、あるいはいっそ『映画ドラえもん のび太ペンギン・ハイウェイ』的な作品なのだ。

だから本書は、架空の町が舞台のSFなのに、なんともノスタルジックでせつない物語となっている。いじめられっ子のウチダくんも、チェスの強いハマモトさんも、ジャイアンみたいなスズキくんも、みんな私たちが小学校4年生の頃に出会い、遊び、ケンカし、冒険した仲間なのだ。こういう「体験したことのない過去を懐かしく思い出す」小説を書かせると、この人は本当に上手い。前に読んだ作品では大学時代だったが、本書では小学生の頃。おそらく著者は、自分自身の中に「小学校4年生」がちゃんと息をしているのだろう。

 

 

スタンド・バイ・ミー―恐怖の四季 秋冬編 (新潮文庫)

スタンド・バイ・ミー―恐怖の四季 秋冬編 (新潮文庫)