【2095冊目】森見登美彦『ペンギン・ハイウェイ』

- 作者: 森見登美彦,くまおり純
- 出版社/メーカー: 角川書店(角川グループパブリッシング)
- 発売日: 2012/11/22
- メディア: 文庫
- 購入: 17人 クリック: 459回
- この商品を含むブログ (75件) を見る
町に突然あらわれるペンギン。ペンギンを生み出す力をもった謎の「お姉さん」。そして森の中に突然あらわれた不思議な「海」……。不思議な要素満載の青春SF小説。
日本SF大賞を受賞したらしいが、サイエンス・フィクションというより藤子不二雄の「すこし・ふしぎ」の方がしっくりくる。何といってもチャーミングなのが、妙に大人びた小学4年生の「ぼく」のキャラ。なにしろ一行目から「ぼくはたいへん頭が良く、しかも努力をおこたらずに勉強するのである」とくるのだから、恐れ入る。しかも大人になるまでは、「三千と八百八十八日かかる」のだ。「そうするとぼくは三千と八百八十八日分えらくなるわけだ。その日が来たとき、自分がどれだけえらくなっているか見当もつかない。えらくなりすぎてタイヘンである」
これを高校生や中学生が言ったらイタイが、小学4年生だとちょっとかわいくさえ思えてしまうから不思議である。そしてこれは、このちょっと(かなり)ませた小学4年生の視点から綴られたスタンド・バイ・ミー、あるいはいっそ『映画ドラえもん のび太のペンギン・ハイウェイ』的な作品なのだ。
だから本書は、架空の町が舞台のSFなのに、なんともノスタルジックでせつない物語となっている。いじめられっ子のウチダくんも、チェスの強いハマモトさんも、ジャイアンみたいなスズキくんも、みんな私たちが小学校4年生の頃に出会い、遊び、ケンカし、冒険した仲間なのだ。こういう「体験したことのない過去を懐かしく思い出す」小説を書かせると、この人は本当に上手い。前に読んだ作品では大学時代だったが、本書では小学生の頃。おそらく著者は、自分自身の中に「小学校4年生」がちゃんと息をしているのだろう。

- 作者: スティーヴン・キング,Stephen King,山田順子
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 1987/03/25
- メディア: 文庫
- 購入: 5人 クリック: 92回
- この商品を含むブログ (70件) を見る