自治体職員の読書ノート

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【1692冊目】石井光太『ぼくたちはなぜ、学校へ行くのか。』

教育・学習本20冊目。

大判の写真本。オールふりがな付きなのは、おそらく本書をもっとも読んでほしい小学生のみなさんへの配慮か。

前半がマララ・ユスフザイさんの国連演説の抄訳、後半が石井氏自身のメッセージとなっているのだが、そもそもマララ・ユスフザイという名前、最近は本も刊行されてけっこう知れ渡ってきているが、みなさんはご存知だろうか。

マララさんは1997年生まれのパキスタン人だ。彼女の生まれ育ったスワート地区を支配する武装グループは、女子の教育を禁止した。マララさんはなんと11歳の時から、ブログや海外メディアでそうした現状を告発、すべての子どもに教育を受ける権利があると主張している。そのため2012年には武装グループに銃撃され、重傷を負うものの一命はとりとめた。2013年には国連総会でも演説。本書に採録されているのはその演説である。

わずか16歳にして、なんだかものすごいプロフィールだが、本書に載っているマララさんの言葉を読むと、そうした経歴より何より、そのシンプルな力強さにびっくりさせられる。なんというか、読んでいるとキング牧師の有名な演説や、ガンジーの非暴力運動を思い出すのだ。単なる「かわいそうなパキスタンの子ども」どころではない。これはもう、16歳にして、すでに筋金入りの社会改革者である。

そのマララさんが訴えた内容が、本書のタイトル「ぼくたちはなぜ、学校へ行くのか」への見事な答えとなっている。マララさんはこう言っているのだ。

「世界にはまだ多くの不平等があります。
たくさんのこどもが、
貧困、差別、不正、無学などに苦しんでいます。
だからこそ、
一人ひとりが立ちあがり、
声を出していかなければなりません。
声を出して世のなかを変えていくべきなのです。

そのために必要なのは、まず、学校と教育です。
わたしたちは、
ことばによって自分の気持ちを
表せるようにしなければなりません。」


また、マララさんは「教育が世界を変えるための解決策です」とも言っている。「明るく平和な未来。わたしたちはそれを、自分たちのことばでつくりだしていかなければならないのです」と。

ここで気付かされるのは、マララさんのこの言葉が、何よりもまず、世界中の子どもたちのためのものであるということだ。児童労働に苦しむ子ども。兵士にさせられる子ども。貧困のため学校に行けない子ども……。

マララさんが声をあげたのは、誰よりもまず、そうした子どもたちに向けてであった。そして、そうした子どもたちの周りにいる大人たちに。世界中に散らばっているはずの、心ある人々に。その意味で、石井氏がこの演説を翻訳し、この本を作り上げ、日本の書店に並べたことには大きな意味がある。

教育を受けよう。学校に行こう。それができないのなら、子どもたちがまず声をあげよう。大人たちがそのことに気づいて、子どもたちが学校に行けるようにしてあげよう。

できない理由を挙げるのはたやすい。社会の制度。風習。貧困。予算。インフラ。だが、教育を受けたいと主張して頭に銃弾を受けたマララさんの前で、そんな理由を挙げることが誰にできようか。このシンプルな力強い言葉の前で、そんな言い訳になんの力が持てようか。

ここまで教育・学校に関する本を続けて読み、紹介してきたが、本書こそは、そのラストを飾るにふさわしい一冊だ。迷ったらマララさんの言葉に戻れば良い。教育委員会文部科学省も、まずはここを原点とすべきであろう。後はそのために何ができるか、一人ひとりが自分の年齢と立場に応じて考えればよい。

そして、教育に携わるすべての方に申し上げたいのは、どうか胸を張って、自信をもっていただきたい、ということだ。なにしろあなたがたは、マララさんの言葉を借りれば「世界を変えるための解決策」に従事しているのだから。いささか月並みではあるが、20冊の「遍歴」の、これを一応の結論としておきたい。