自治体職員の読書ノート

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【1458冊目】吉田利宏『つかむ・つかえる行政法』

つかむ・つかえる行政法

つかむ・つかえる行政法

帯に「これを読んでもわからなければ行政法はわからない」とあるが、ホントだ。

ちゃんと比べたワケじゃないが、印象としては、類書の中でもダントツにわかりやすい。ユニークな「つかみ」「たとえ」のキレも相変わらず。司法制度改革を説明するのに「中華ハオハオ軒の改革」とか、原処分主義の説明に「夫婦喧嘩」をもってくるなんて、この人にしかできない芸当だ。

たとえの巧さにも毎度感心させられる。今回唸らされたのは、「不服申し立ては立ち食いそば、取消訴訟はこだわりの手打ちそば」というくだり。確かに不服申し立ては「早い(審理のスピードが)」「安い(費用が)」、取消訴訟は「遅いけどていねい」で、たとえが見事にはまっている。

ほかにも準法律行為的行政行為が「自動販売機」(お金を入れれば自動的に品物が出てくるように、要件を満たせば自動的に効果が発生する)とか、不服申立ての「却下」が「お見合いでいえば『ちょっと年齢が離れすぎて〜』などといわれ会ってさえもらえないようなもの」なんて、言われてみれば確かにそうだが、よほどその内容を本質的に理解していないと出てくるたとえではない。

こういうたとえが素晴らしいのは、単に「入りやすい」だけでなく「忘れない」という点だ。定義を丸覚えするより数段効率が良く、しかも楽しい。じっさい、この本は読んでいて実に楽しかった。行政法の本を読んで「楽しい」なんて信じられないかもしれないが、事実だからしょうがない。

説明の手順の組み立て、挿入されている図表などもたいへんよくできている。重要な判例やややこしい法改正の経過もきちんと説明されており、なんというか、間口は広いが奥行きも深い一冊なのだ。初学者はもとより、行政法を「わかったつもり」の人こそ(私のことだが)読んでほしい一冊。目からウロコがボロボロこぼれること請け合いである。