自治体職員の読書ノート

自治体で働くソーシャルワーカーが、読んだ本を紹介します。

【423冊目】櫻井敬子「行政法のエッセンス」

行政法のエッセンス

行政法のエッセンス

行政法のテキストとしては、どちらかといえば「入門者用」。エッセンスというだけあって網羅性にはやや欠けるが、重要なポイントはとても丁寧におさえられている。

特筆すべきは、この種のテキストとしては異例なほどの分かりやすさと明快さである。全体を通じて、法律の教科書にありがちな専門用語の羅列や過度に複雑な解釈論を排し、ややこしい部分ほど、日常用語に置き換えて「普通の日本語」で説明してくれている。特に、導入編の「第1章 行政法の世界」と「第2章 公法としての行政法」の説明は出色。とりわけ第2章では、公法論という、たいていのテキストではやたらに学説が入り組んで分かりにくい(あるいは逆に、きちんとした説明を避けている)ところを、これ以上ないくらい分かりやすく整理した上で、著者としての見解を明確に打ち出している。

ちなみに、本書が分かりやすい一因は、公法論に限らず全体的に、この「著者の見解がはっきりと打ち出されている」ところであるように思える。客観性ばかりが目立つ文章は、正確ではあるがやはりどこか面白みに欠けるものである。そこを本書は、あえて主観的な価値判断に切り込み、たとえば個々の判例についても、善し悪しの評価をきちんとすることで、結果としてメリハリがついて読みやすいものとなっている。また、随所に挟まれている「コラム」も、内容と連動しつつ具体的なケースを紹介するもので、理解の手助けをしてくれている。

辞書的に使うには網羅性に欠けるが、通読することで確実に行政法に対するイメージがこれまでよりくっきりと見えてくる一冊である。この種のテキストを読んでいて、面白いと感じること自体、稀な経験であった。