自治体職員の読書ノート

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【477冊目】東野圭吾「白夜行」

白夜行 (集英社文庫)

白夜行 (集英社文庫)

1970年代の大阪、廃ビルで見つかった質屋の店主の死体。そして、その後謎の死を遂げた女性。本書は、この事件を振り出しに、質屋の店主の息子「桐原亮司」と、女性の一人娘「唐沢雪穂」の二人を二つの焦点として進んでいく。背景として描かれるオイルショック、バブル景気やさまざまな社会風俗が切れ端のように挿入され、妙に懐かしい。

物語は二人の間を振り子のように揺れながら次々とめまぐるしく展開する。一見とりとめなく進行するように見えて、それぞれのパーツは微妙につながりあい、次第にその全体像が見えてくる。しかし、その全容が一望できるのは物語も終盤になってから。それまで、読者はどこに連れて行かれるか見当もつないまま右へ左へと振り回されるのだが、それでも読み進められるのはひとえにこの作家のストーリーテリングの巧みさのゆえであろう。何より、桐原亮司と唐沢雪穂のつながりがなかなか見えてこないところが、物語の全体像を掴みにくくしている。

とにかく東野圭吾の語りの業を堪能する一冊。焦点となる二人が妙に人間離れして描かれているのはちょっと気になったし、読後感はちょっともやもやしたものが残ったが、純粋にエンターテインメントとして楽しめた。