自治体職員の読書ノート

読むために書くのか、書くために読むのか。

【43冊目】群ようこ「かもめ食堂」

かもめ食堂

かもめ食堂

フィンランドで日本人が経営するレストラン「かもめ食堂」を舞台にした、映画化もされた小説・・・・・・というより、正確には映画のために書き下ろされた小説。

独り日本からヘルシンキに来て「かもめ食堂」を経営するサチエは38歳の女性。この小説は、彼女をはじめ、それぞれの事情を抱えてフィンランドに来た3人の女性を中心に進んでいく。

フィンランドに来るまでのいきさつがとても丁寧に書かれているので、3人がかもめ食堂で働くまでの過程に説得力があり、見知らぬ中年女性3人がフィンランドで出会って和気藹々と食堂で立ち働くという奇妙な状況なのにまるで違和感がない。

また、3人のやりとりもとてもユーモラスで自然である。何より、中年女性3人という一見あまりぱっとしない取り合わせが、この小説ではとても輝いてみえる。作者の腕であろう。

ストーリーは淡々と進み、事件らしい事件も最後にちょっと起きるだけ。それもあっけなく片付いてしまう。しかし、活き活きとした人物描写、絶妙のユーモア、登場人物の魅力で最後まで一気に読ませる。特に中年を迎えた女性の心境に対するするどい洞察は、失礼ながら同世代である作者ならではのものだ。映画のほうは未見だが、一度見てみたいと思えた。また、舞台でやっても面白そうだ。誰かやらないだろうか?