自治体職員の読書ノート

自治体で働くソーシャルワーカーが、読んだ本を紹介します。

【2386冊目】しりあがり寿『あの日からのマンガ』

 

あの日からのマンガ (ビームコミックス)

あの日からのマンガ (ビームコミックス)

 

 

あの日。すべてが変わったと思い、日常を日常として送ることに、欺瞞と戸惑いと罪悪感を覚えていた、あの日からの日々。

ぐらりと地面が揺れるたびに不安に思い、余震であったことがわかるとなぜか安心する奇妙な感覚。放射能という目に見えないものに怯え、報道される数値に一喜一憂した日々。今や忘れていたそんな感覚を、この本は見事なまでのライブ感で思い出させてくれる。なぜといって、本書のメインは震災前から朝日新聞夕刊に連載されていた「地球防衛家のヒトビト」。まさに震災後、リアルタイムで描かれていたマンガなのだ。

4コマ以外の短編マンガも、震災後の日々の中で描かれたものばかりなのだが、これが素晴らしく叙情的。特に、震災から50年後を描いた「海辺の村」の、森の中に林立する風力発電機に囲まれた福島第一原発と、その上を飛ぶ羽の生えた子供達を描いた見開きページは忘れられない。ラストの「そらとみず」も傑作。海に沈んだ瓦礫、そこから生えてくる蓮のような植物と、その上でほほえむ子供達の姿を見ると、何かすべてが浄化されるような感覚に満たされる。

今の日本は、震災を「なかったこと」にし、「何も変わらなかった」ことにして、その上に未来の国と社会を作ろうとしているように見える。だが本当は、私たちはずっと「あの日から」の日々を生きているのである。そのことを私たちはいつか、痛烈な教訓とともに思い出すことになるだろう。せめてこのマンガを読んで、自分たちが本当はどんな「今」を生きているのか、思い出すようにしたほうがよい。