hachiroetoのものぐさ遊読帖

自治体職員。仕事は福祉系。読書は雑食系。

【2269冊目】バリー・ハナ『地獄のコウモリ軍団』

 

地獄のコウモリ軍団 (新潮クレスト・ブックス)

地獄のコウモリ軍団 (新潮クレスト・ブックス)

 

 

B級感あふれるタイトルに、しりあがり寿画伯によるぶっとんだ表紙。読む前から否応なくテンションも期待値も上がる。これはガルシア=マルケスばりのマジックリアリズムか、あるいは筒井康隆的なスラップスティックか、またはウラジーミル・ソローキンのごとき悪夢の短篇集?

結論からいうと、どれでもない。というか、そこまで破壊的な作品ではない。何というか、もう少しじわりと、深いところからえぐってくる感じ。巻末の訳者あとがきで書かれているとおりの、アメリカ南部ならではの想像力の産物なのだ。バーボンとタバコの、絶望と退廃の。その中にあってもたくましく生きる人々の。

「もう自由の国などうんざりなのであります。独立戦争の英雄ネイサン・ヘイルも、パトリック・ヘンリーも、大馬鹿者ですぞ。もちろん、きゃつらは面白い存在であったことでありましょう。彼らには物語があったのですからな。しかし、これだけは自信を持って申し上げますが、我々にそんな物語など、ない。我々は自由すぎるのであります。自由に怯えてしかるべきなのであります。すべて善き人々というものは、自由に怯えるべきである―そうではないでありましょうか?」(p.270-271 「この御目出度き種族」より)

この感覚、この絶望感なのだ。物語がなく、自由だけがあることの。そして、それはひょっとすると、アメリカ南部にかぎった話ではないのかもしれない。例えばわが日本だって、どうだろうか? 今の日本に「物語」はあるだろうか。我々がもっているのは、空虚な「自由」ばかりなのではなかろうか?