自治体職員の読書ノート

自治体職員です。仕事の関係上、福祉系が多めです。読書は全方位がモットー。

【2792冊目】瀬尾まいこ『夜明けのすべて』



以前から気になっていた本です。障害がひとつのテーマと聞いていたので、ぜひ読まねば、と思っていました。


主人公は、PMS月経前症候群)の藤沢さん、パニック障害の山添くん。二人とも、周囲になかなか理解されない障害を抱え、そのため勤めを辞めたり、生活が大きく変わったりしてきました。


そんな二人が出会い、お互いのことを知るうちに、相手だけではなく、自分自身のもつ障害についての理解も深まっていくところが面白いです。そして「2年間笑ってこなかった」山添くんは藤沢さんのおかげで笑うようになり、月経前になると怒りをコントロールできない藤沢さんは、山添くんによって対処の仕方を学びます。


大事なのは、二人とも、お互いの障害を「克服させよう」とか「乗り越えさせよう」などとは思っていないこと。なぜって、そんなのは到底無理であることを、二人こそが一番よく知っているからです。そうではなく、自分のもっている障害への対処の仕方を学ぶ、言い換えれば「障害と付き合う」あり方を、二人はお互いから学びます。それによって、二人は少しずつ自由になり、苦しい日々が少しだけ楽になるのです。


そんな二人が勤める「栗田金属」の環境も素晴らしいです。「無理なく事故なく」がモットーで、向上心やらイノベーションにも縁がなさそうですが、実はものすごくお互いのことを気にかけ、フォローしあっている。世の中がこういう会社ばかりだったら、障害者の法定雇用率なんて仕組みはいらなくなるのかもしれません。


最後までお読みいただき,ありがとうございました!