自治体職員の読書ノート

自治体で働くソーシャルワーカーが、読んだ本を紹介します。

【2418冊目】ブルガーコフ『巨匠とマルガリータ』

 

 

 

 

今読み終わったところだが、なんとコメントしてよいかわからない。モスクワに現われた悪魔。衆人環視の中で披露される黒魔術。立って歩き、話す黒猫。箒に乗って空を飛ぶ魔女と、その後を追うブタに乗って空を飛ぶ女。あちこちで起こる火災。降ってくるルーブル札。そしてアパートの一室で繰り広げられる悪魔の大舞踏会……。とにかく奇想に次ぐ奇想のオンパレード。こんな小説、読んだことがない。

さらにそこに、「巨匠」と呼ばれる作家が書いた小説が挿入される。それもなんと、キリストの処刑と総督ピラトゥスを描いもの。この小説が実は本書全体の軸、ハブになっているのだが、そのことに気付いたのは二度目に読んだ時。最初はとにかく、圧倒的なイメージの奔流に流されっぱなしだった。

風刺であることは明らかだ。かつてのソ連の風刺であって(だからこそ刊行時は発禁処分となった)、国家とか権力機構全般への風刺でもある。いわれなき罪で消える人や不条理な官僚機構、言論への抑圧など、今の日本が舞台でもまったくおかしくない。「後から消えた」あいちトリエンナーレへの補助金など、シュールそのもの、まさしくソ連ナチス北朝鮮あたりで起こりそうなイベントである。

カフカというより想像力の爆発度合いはガルシア・マルケスあたりに近いだろうか。個人的にはイエスの処刑を描いた作中作からは、ドストエフスキーの『カラマーゾフの兄弟』の「大審問官」を連想した。まあ、とにかく得体の知れない、ただとんでもない傑作だということだけは直感的にわかるというヘンな小説。ご一読あれ。