自治体職員の読書ノート

自治体で働くソーシャルワーカーが、読んだ本を紹介します。

【2380冊目】高山なおみ『諸国空想料理店』

 

諸国空想料理店 (ちくま文庫)

諸国空想料理店 (ちくま文庫)

 

 

インスタグラムからの転載。

料理エッセイの名手、高山なおみの第一作。かつて吉祥寺に実在した「諸国空想料理店KuuKuu」の店内フリーペーパーに、当時この店で料理を作っていた著者がエッセイを書いたものがもとになっている。というか、そもそもこのフリーペーパーのエッセイが担当編集社の目にとまったことがきっかけで、高山なおみはデビューしたのである。

本書の面白さはその臨場感というか、ライブ感。その日のイベントやお客や気分によって、様々な国の料理(といっても「空想」だから、正確さよりそれっぽさが大事)のレシピや組み合わせを考え、実際に料理し、盛り付ける。その範囲は奄美大島、韓国、インド、ペルー、アフリカと幅広い。

シチュエーション別の料理もおもしろい。失恋したときは自家製ラー油で下品に餃子。恋人とはベッドの中でアイスクリーム。夜遅くにはなんと唐辛子を使ったメキシコ風ココア。料理とは人間の生活であり、人生であり、しかもそこから自由で、奔放で、途方もなく楽しいものなのだ。

「まな板なんかなくっても、包丁が少々切れなくても、狭い台所でもおいしいものは作れるはずじゃあないかと信じている/大事なのは、食べたい意欲の満ちあふれている食卓のために料理するということ/(略)おいしくないものなんかこの世にないとまで思っている」(p.194)