自治体職員の読書ノート

自治体職員です。仕事の関係上、福祉系が多めです。読書は全方位がモットー。

【2047冊目】ジェフリー・ディーヴァー『スキン・コレクター』

 

スキン・コレクター

スキン・コレクター

 

 



う~ん。相変わらずの安定した面白さなんだが、あまりにも「安定」し過ぎているかもしれない。さすがに展開がワンパターン化してきたような。

もちろん「偉大なるワンパターン」というのもあるわけで、同じような展開がダメということではないのだが、問題は、ディーヴァーの最大の持ち味が「意外な結末」「どんでん返し」にあるというところ。もちろん、事件の真相がすぐわかるわけではないのだが、読むうちに「これは裏にもうひとつのシナリオが……」「こいつがこんなあっさり死ぬはずが……」などと、パターンに則った先読みができてしまうのだ。

そして、たいていその予想は当たる(当たらないということは、つまりいつもの「ひねり」がないということになるので、それはそれで期待外れということになってしまう)。こうなってくると、著者としてはその予想をさらに超える意外な仕掛けを用意しなければならなくなるのだが、これはたいへん難しい。あまりストーリーをひねりすぎるとわけがわからないものになってしまうし、あるいは屋上屋を重ねるといった感じで、いささか無理のある設定になってしまうのだ。

本書でいえば「再会」というタイトルの第5章がこれにあたるだろう。確かに意外と言えば意外で、伏線もそれなりに張ってはあるのだが、やはり無理があることは否めない。

なお本書のメインの謎解きは、殺人犯が被害者の身体に彫り込んだ言葉の意味にあるのだが、これは大方の日本人にはちょっと難しいかもしれない(アメリカの人なら「おおっ」と膝を叩くところなのだろう)。とはいえ、伏線の張り方の巧みさ、語り口のスピード感、定番キャラクターの魅力といったポイントで見れば、やはりディーヴァー作品は頭一つ抜けている。この世界観、この展開が、ディーヴァーにとっての「自分の歌い方」なのであって、ワンパターンとわかっていてもそれを貫き通すところに、この人の作家魂を見るべきなのかもしれない。