hachiroetoのものぐさ遊読帖

自治体職員。仕事は福祉系。読書は雑食系。

【441冊目】ジェフリー・ディーヴァー「ウォッチメイカー」

ウォッチメイカー

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最近ちょっと遠ざかっていたディーヴァーもの。続けて読むと展開にワンパターンさを感じてしまい、やや敬遠していたのだが、しかし読んでみるとやはり面白い。しかも本書はその「ワンパターンさ」を逆手に取っているところがあり、してやられた、という感じ。

この「してやられた」感こそディーヴァー作品の魅力なのだが、本書ほどそれを味わわされたこともない。最初は「これがリンカーン・ライムものの最高傑作?」と首をひねっていた部分が、後になればなるほど氷解していく。確かにこれは最高の犯罪計画かもしれない。詳細があまり書けないのが残念だが、巧妙の一言。凄い。

また、新しいキャラクターとして登場するのが尋問のプロでキネシクスの専門家、ダンス。人間のちょっとしたしぐさや言葉遣いからその人間の心理を手に取るように読むという、いわばライムの「微細証拠物件」への科学的アプローチの人間版である。この脇役の存在が実によくストーリーに効いている。しかも人間としても魅力的。今後、ダンスを主役とした長編も出版されるらしいので、楽しみである。ただ、こういう「嘘を全部見抜ける」という能力はある意味ミステリ作家泣かせ、ジョーカーのような存在(嘘がつけないというのは、ミステリにとってはある意味の禁じ手的状況)であって、これをどううまく使うのか、というところが作家の腕の見せ所といえよう。

個人的には、「ボーン・コレクター」に登場したあの人たちに再会できたことも嬉しいサプライズであった。サックス同様、その存在はずっと気にかかっていたのだから。