自治体職員の読書ノート

自治体で働くソーシャルワーカーが、読んだ本を紹介します。

【475冊目】中野雅至「公務員クビ!論」

公務員クビ!論  (朝日新書)

公務員クビ!論 (朝日新書)

タイトルは衝撃的だが、中身はきわめてまっとうな公務員論。

著者の履歴がユニークである。地方公務員からスタートして国家公務員に転職し、本省や出先機関などを経験してきたとのことであり、当然、公務員の実態に関する情報は豊富である。しかし、本書は単に著者の体験談というだけではない。本書が面白いのは、著者個人の体験と、公務員をめぐる社会の状況や制度のあり方、さらには社会状況や国家の状況の分析といった俯瞰的な視点が、とても自然なかたちで融合していることである。単なる公務員擁護論ではなく、かといって安易なバッシングでもない、非常にバランスのとれた議論が展開されている。

著者は単なる公務員バッシングには否定的である。そのことを、本書では学校の先生を例にとって説明している。教師に対する親のクレームが相次ぐことによって優秀な人材が教師を避けるようになり、さらに教師の質が劣化し、それがさらなるバッシングにつながるという負のスパイラルは、確かに公務員全般に妥当する。もちろん、批難すべき点はきちんと批難される必要があるが、優秀な人材が公務員になってほしいと願うなら、過度のバッシングは逆効果であろう。だからといって、「褒めろ」ということでは、もちろんない。著者が主張するのは、「官民統一」である。言い換えれば、民間セクターと公共セクターの流動性を高め、多くの人が「公務員を経験した会社員」や「会社員を経験した公務員」になることだ。確かに現在の制度では、「官」と「民」の間に壁がありすぎる。そのことがヒステリックな批判にもつながるし、一方で行政への過剰な期待や欲求になる。官で問題が起きると「だから公務員は……」と憤慨し、民間で問題が起きると「行政が監視すべき」というのでは、あまりにも場当たり的で、官と民の関係に関するビジョンを欠いている。もう少し冷静に、客観的な目で「公務員制度」のあり方を眺めるべき時に来ているのかもしれない。そのために、本書のような議論の提示の仕方はとても有効であるように思える。