【205冊目】ロバート・ダーントン「猫の大虐殺」
- 作者: ロバートダーントン,海保真夫,鷲見洋一
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 1990/03/09
- メディア: 新書
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「面白さ」を期待して読んだわけではないのだが、すごく面白かった。18世紀のフランス庶民を描いた歴史書がこれほど面白く読めること自体が驚き。4つの論述からなっているが、いずれも通常の歴史研究ではなかなか日があたらない人々の状況を、人類学的方法を用いつつパズルを解きほぐすように明らかにしていくものである。
最初の「農民は民話を通して告げ口する」が民話の分析を通した18世紀フランス農民の意識や社会状況の分析。2つめの「労働者の叛乱」は、印刷業者の親方と職人の対立状況とその背景にあるフランス都市部の状況を、職人らによる「猫の大虐殺」事件を通して明らかにする。次の「読者がルソーに応える」は当時の比較的富裕な階層の「読書法」を述べたもので、本読みとしては興味深々の内容である。
最後は「フランス革命はなぜ革命的だったのか」という短い論考である。しかし、考えてみればそれまでの3つの論述に示された「貴族を暗に揶揄する農民」「猫に代表されるブルジョワジー的なものに対する職人の叛乱」「啓蒙思想が流布されていた当時の読書状況=啓蒙思想の伝播状況」は、いずれもその後のフランス革命を準備する社会状況そのものなのであり、その意味で最後に追加されたこの短い論考は、本書の集大成的な位置づけとなっているといえるように思う。