hachiroetoのものぐさ遊読帖

自治体職員。仕事は福祉系。読書は雑食系。

【196冊目】ヘルマン・ヘッセ「幸福論」

幸福論 (新潮文庫)

幸福論 (新潮文庫)

晩年のヘッセが昔を回顧し、心境を綴ったエッセイや自伝的小説14篇。いずれも短いがどこか懐かしく、心に響くものがある。個人的には「中断された授業時間」の若き日のほろ苦い思い出、アウトサイダー的な自己を小さなカラスに投影した「小がらす」、表題作の「幸福論」で鮮やかに描写された、ヘッセならではの「絶対的」幸福の瞬間が印象的であった。ヘッセの一生は波乱の連続であったというが、このような穏やかな老境を迎えるには相当の紆余曲折があったことだろう。しかし、本書はそれをまったく感じさせない静かな筆致でつらぬかれている。見事な境地、見事な「年老い方」だと思う。