hachiroetoの読書ノート

この世の片隅でこっそり書き続けています。一応自治体職員。仕事は福祉系。読書は雑食系。

【195冊目】寺田元一「『編集知』の世紀」

ハーバーマスのいう「市民的公共圏」を18世紀フランスのサロンやカフェ、劇場に見出し、そこに登場した「ヌーヴェリスト」(情報屋的ジャーナリスト)やギャルソン(三文文士)たちが編集的相互作用の結果産み出したさまざまな成果をたどる一冊。特に後半は、ディドロらの有名な「百科全書」、とりわけそのクロスレファランス機能に着目、展開する。これは単なる相互参照のガイドにとどまらず、表立っては批判できないさまざまな対象を暗に批判し、あるいは皮肉っていく道具となった。もちろん、こうした批判ができる背景には、サロンやカフェにおける自由闊達で皮肉と辛辣さに満ちた「世論」の発生があったのであり、百科全書にしても、相対する意見や思想がその中でぶつかりあっており、それを読むことは、読み手自身に「自家製の哲学」の醸成を迫り、ひいてはお仕着せの「思想」とは異なる自由な思想の構築をすすめるものであったのである。こうした、一見地味で平穏な「市民的公共圏」や「市民による編集知の産物」の発生が、のちのフランス革命につながる反体制思想をはぐくんだことを思うと、なかなか感慨深いものがある。