【135冊目】ビートたけし「達人に訊け」
- 作者: ビートたけし
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2006/11/16
- メディア: 単行本
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現代の各分野における「達人」10人とビートたけしが行った対談集。
こうした本はホスト役の役割が大きく、聞き方の巧拙によって出来が全然違ってくるのであるが、その点、ビートたけしはまさに適任である。決して単調にならず、時には相手のいうことをまぜっかえし、ギャグを盛り込みながら、実にうまく相手の言葉を引き出している。聞き手の力量とはよくいわれることであるが、こういう聞き方もあるのか、と思わせられた。
もともと、「麻雀の達人」として取り上げられている桜井章一氏との対談が読みたくて入手したのだが、他の「達人」の顔ぶれも、藤田紘一郎、毛利衛、岡部幸雄など錚々たるものである。テンポの良い対談で気軽に読めるが、何しろ当代一流の達人と天才たけしのコラボレーションであるから、とんでもないすごいこと、重要なことがさらりと書いてあって油断ならない。
どれも面白く読めたのだが、印象に残ったのは字幕製作者の戸田奈津子氏の話で、字幕をつける際の苦労や工夫、特にジョークに字幕をつける難しさ(何せホストが映画監督かつコメディアンであるから、質問の際の熱の入れ方が違う)。また、「痛くない注射針」の開発などで知られる「世界一の金型工場」岡野工業代表の岡野雅行氏の話もすばらしい。並外れた発想と技術が、昔ながらの職人の矜持を支えているのを感じた。