自治体職員の読書ノート

自治体職員です。仕事の関係上、福祉系が多めです。読書は全方位がモットー。

【128冊目】小杉俊哉・神山典士「組織に頼らず生きる」

組織に頼らず生きる―人生を切り拓く7つのキーワード (平凡社新書)

組織に頼らず生きる―人生を切り拓く7つのキーワード (平凡社新書)

本書は大きく7つの章立てに分かれている。それぞれの章の前半は、清原和博中田英寿佐渡裕など、「組織に頼らず生きている」人または団体を神山氏が描き出し、後半は、前半に関連するキーワードを小杉氏が取り上げ、一般化したかたちで解説を加えている。

「組織に頼らず生きる」と言っても、組織の外で生きるとは限らない。むしろ、本書の特に解説部分は、組織の中にありながら依存せず生きることに力点が置かれている。著者の小杉氏自身、NECを飛び出して私費留学し、マッキンゼーアップルコンピューター等に勤務した後ベンチャー企業を起こすという異色の経歴であるが、その考え方には、組織の中にあっても主体性を失わず、自力で道を切り開くという意識が貫徹している。

各章の前半部分では、仕事柄ということではふらの演劇工房のくだりがやはり面白かった。農業王国の富良野にあって「なぜ演劇を」と言われつつNPO第一号として演劇工房を立ち上げ、全国的に有名な文化団体となるまでの試行錯誤の過程はすさまじく、メンバーの情熱と意志の強さ、意識の高さは見上げるばかりである。また、清原和博の復活劇が個人的には一番印象に残った。これまで清原という選手にはあまり良いイメージをもっていなかったが、見方が変わった。この人はすごいと素直に思えた。

役所はこれまで、組織の安定性において民間企業の比ではなく、他業種への応用性も低いため、サラリーマン以上に、組織べったりになりやすいところがあるように思う。しかし、夕張市の例ではないが、自治体職員だからといってこれからも組織にもたれて安閑としていられるとは思えない。組織の中にありながら自立し、バランスをとって主体的に生きるためのヒントが、本書にはたくさんちりばめられている。